親に多額の借金があった場合の相続放棄による解決方法とは?

相続放棄

通常、遺産相続と聞くと、現金や預貯金、不動産などの資産の相続をイメージすることが多いですが、実際には親が借金を残して死亡することもあります。多額の借金が残された場合、その借金はどうなるのでしょうか?相続人である子どもが相続するとなると、それを免れる方法がないのかが問題となります。

そこで今回は、親に多額の借金がある場合における、相続放棄による解決方法について解説します。

 

1.借金も相続の対象になる

親が多額の借金を残して亡くなった場合、その借金は相続の対象になるのでしょうか?

実は、借金も相続の対象になります。

遺産相続と聞くと、プラスの資産のイメージが強いですが、負債が残されていた場合にはマイナスの資産である負債も相続の対象になるので注意が必要です。

資産や負債以外にも、被相続人(亡くなった人)の契約上の地位なども相続の対象になるのでたとえば被相続人が賃貸住宅を借りていた場合には、賃借人としての地位も相続されてしまいます。

負債が相続される例としては、たとえば親がサラ金から借金をしていた場合、銀行借入をしていた場合、事業用ローンを組んでいた場合などがあります。他にも、未払家賃があったり交通事故を起こして損害賠償債務を負っていたりした場合などにも、それらの負債が相続されてしまいます。

負債が相続されたとき、相続人が単純承認してしまったら、相続人が被相続人に代わってその負債を支払わなければならず、子どもが親の借金を肩代わりするのと同じ結果になります。なお、相続人が複数いる場合には、借金は分割帰属するので、法定相続分に応じて引き継がれます。たとえば親に300万円の借金があって、子どもが3人いるケースでは、子どもがそれぞれ100万円ずつの負債を相続することになります。

 

2.借金を返済出来ないとどうなる?

親の借金を相続してしまった場合、その支払いができないとどうなるのかが問題です。

借金を相続すると、その借金は自分のものとなります。そこで、他の遺産から支払が出来ないのであれば、自分の財産から支払をしなければなりません。

そして、自分の財産からも支払ができないと、債権者から支払の督促が来ます。支払をしないで放置していたら、裁判を起こされて判決をとられ、自分の預貯金や給料などを差し押さえられてしまうおそれもあります。そのようなことになったら、もはや自己破産などの債務整理をするしか道はなくなってしまいます。

このように、借金を相続して支払ができないと大変な不利益があります。

 

3.相続放棄で借金の相続を防ぐ

親が借金を残して死亡した場合に相続をしない方法として、「相続放棄」があります。相続放棄とは、遺産について、プラスの部分もマイナスの部分も含めて、一切合切を相続しないことです。相続放棄をすると、その人は初めから相続人ではなかったことになるので、借金を相続することはありません。

そこで、親が借金を残して亡くなった場合、早めに相続放棄をしてしまえば、借金を引き継ぐことがなくなりますし、債権者から支払の督促が来ることも防ぐことができます。

 

4.相続放棄のメリット

相続放棄をすると、借金を含めたあらゆる負債を相続せずに済むことが、大きなメリットです。

たとえば、親が重大な交通事故を起こして亡くなった場合には、単純承認すると多額の損害賠償債務を相続してしまうおそれもありますが、相続放棄をするとすべて免れることができます。

また、相続放棄をすると、自分ははじめから相続人ではなかったことになるので、遺産分割協議に参加する必要がありません。遺産相続に関心がなく、遺産分割協議が面倒だと感じている場合には相続放棄をするメリットがあります。

さらに、自分は相続をせず他の相続人に遺産を譲りたいケースでも相続放棄が役立ちます。たとえば、家を継ぐ長男にできるだけ多くの遺産を相続させたいケースにおいて、妹が相続放棄するようなイメージです。

このように、相続放棄にはいろいろな利用方法とメリットがあるので、覚えておくと良いでしょう。

 

5.相続放棄のデメリット

相続放棄にはデメリットもあります。最も大きなデメリットは、相続放棄をすると、マイナスの負債だけではなく、プラスの資産も相続出来なくなることです。

遺産相続をしたとき、必ずしも遺産全体が把握できているわけではありません。詳細に調査をしないと、全体としてプラスになるのかマイナスになるのかがわからないこともあります。

相続があったとき、借金があることがわかったので早々に相続放棄をしてしまったけれど、後によく調べてみたら、プラスの資産の方が相当多かったということもあります。このような場合には、相続放棄しなければプラスの資産を現金に換えるなどして債権者に支払をすれば、残りを相続することができたはずです。しかし相続放棄すると、何も受け取ることができなくなるので、デメリットが大きいです。

また、遺産の中に守りたい資産がある場合にも相続放棄すると問題が起こります。たとえば、先祖代々伝わる土地などが遺産に含まれているとき、相続放棄をするとその土地を失うことになります。他の相続人が相続してくれたら土地を守ることができますが、誰も相続をしない場合には、土地は売却されて債権者に配当され、残りは国のものになってしまいます。

このように、相続放棄には一定のデメリットもあるので、押さえておく必要があります。

 

6.相続放棄の期間

相続放棄をする場合、期間に注意しなければなりません。

民法上、相続放棄ができる期間が定められており、具体的には「自己のために相続があったことを知った時から」3ヶ月以内とされています(民法915条1項)。

具体的には「相続があったこと(被相続人が死亡したこと)」と「被相続人に負債があったこと」を知ってから3ヶ月以内と理解すると良いです。

この3ヶ月期間のことを「熟慮期間」と言いますが、熟慮期間を過ぎてしまうと、相続放棄や限定承認ができなくなって単純承認するしかなくなってしまい、借金を免れることは不可能になるので、注意が必要です。

家庭裁判所に熟慮期間延長の申立をして、その期間を延ばしてもらうことも可能ですが、延長の申立をしたとしても、必ず認められるとは限りません。

借金を相続した場合には、できるだけ早く相続放棄などの手続きをとる必要があります。

 

7.相続放棄の方法

相続放棄をするためには、具体的にどのような手続きが必要なのかをご説明します。

相続放棄は、家庭裁判所に対して「相続放棄の申述」という手続きをすることによって行います。

手続きをする家庭裁判所は被相続人の最終の住所地を管轄する家庭裁判所です。具体的には、相続放棄の申述書という書類を作成して提出しますが、このとき被相続人の除籍謄本や住民票除票、相続人の戸籍謄本などの書類をつける必要があります。また、800円分の収入印紙も必要です。

書類を提出すると、しばらくして家庭裁判所から相続放棄の照会書という書類が送られてきます。これに対して回答書を送り返すと家庭裁判所で審理が行われて、問題がなければ相続放棄の申述が受理されて、申述者のもとに受理書が送られてきます。

これが送られてきたら、相続放棄が無事に済んだということです。

このように、相続放棄には手続きが必要です。ですから、「相続を放棄する」と親族などほかの相続人に伝えるだけで自動的に相続放棄が成立するわけではありませんので注意が必要です。

 

8.相続放棄は弁護士に依頼できる

相続放棄をしたいと思っても、自分ではどう手続きして良いかわからないことがあります。相続からある程度時間が経っていて、今からでも熟慮期間内に手続きができるのか不安に思うこともあるでしょう。

このような場合、相続放棄の手続きを弁護士に依頼することが可能です。弁護士であれば、法的な手続きに慣れているので、スムーズに相続放棄の手続きを進めてくれますし、照会書に対しても適切に返答をしてくれるので安心です。

ただ、弁護士に依頼するとしても、本当に熟慮期間を過ぎてしまっては手続きが難しくなってしまいます。

親の借金を相続して、対応に迷っている場合には、早めに相続放棄を弁護士に依頼することをおすすめします。

 

○まとめ

今回は、親の借金を相続してしまった場合の相続放棄について解説しました。

借金も相続の対象になるので、親が借金を残して死亡した場合、単純承認したら自分が借金返済をしなければなりません。このような結果を避けるためには相続放棄することが有効です。

相続放棄は、3ヶ月の熟慮期間内に行う必要があるので、早めに手続きをしなければなりません。今、親から借金を相続して対応に迷っている場合には、早めに弁護士に連絡を入れて、相続放棄の相談に行くことをおすすめします。

 

○相続放棄など相続問題は田中法律事務所にお任せください

遺産相続には様々な手続きや期限などがある上に、手続きを誤ってしまうと多額の負債を相続してしまうことまでありますので、十分注意が必要です。しかし、一般の方がこれらの判断や手続きをすべて行うのには無理がある場合があります。

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