遺産相続

1.初めに

遺産の有無にかかわらず、故人の死に際して発生するのが「相続」の問題です。故人の死を悼む間に始まり、次々と様々な「期限」がやってくるのが相続です。しかし、相続はそう頻繁に起こるわけでもないため、詳細な流れをご存知の方はそう多くはないかと思います。そのために、いざ相続が発生した時に慌ててしまったり、思わぬトラブルが発生してしまったりするケースが非常に多いのが実際です。

更に相続は「争続」と表現されることもあるほど、時に遺産分割や遺言、その他残された借金問題などにまつわる争い・トラブルが多く、事態が深刻になってから弁護士にご相談に来られる方もいらっしゃいます。

そこで、このサイトで相続について詳しく知っていただき、相続トラブルが既に発生している方でも、できる限り早期に手を打ち、解決へと進んでいただけるようにと願っております。

このサイトでは、相続に関する基本的な知識、流れ、手続き、制度などをご紹介し、わかりやすく解説してまいります。

遺産相続には様々な手続きやその期限があるため、相続問題は専門家である弁護士に任せた方がよい部分がたくさんあります。当事務所では遺産相続にかかわるご相談を受け付けております。お電話もしくはメールにてまずはお問合せください。

2.相続発生後の流れ

財産を残す側の故人(以下、被相続人と呼びます)がなくなった時点で相続が開始します。

まずは概略をおさえておくと理解がスムーズです。

相続は相続税の納付を一つのゴールとして様々な手続きを行っていきます。なお、相続税の納付は、相続発生後10カ月以内となっていますが、これが意外にも短いものです。特に相続財産が多い場合や遺産分割でもめる場合、遺言書について争う場合などでは10カ月を超えてしまうケースもあります。そうすると、相続税を期限の10カ月を過ぎてから納めることになり、様々な控除を受けられなくなったり、延滞税がかかったりして、非常に高額の相続税を納める必要が発生します。ですから、弁護士などの専門家を交えた上で、確実かつ迅速に相続手続きを行うことが求められます。

①     死亡届

被相続人の死亡後には、医師により「死亡診断書」を発行してもらいます(事件性がある場合は、警察が「死体検案」を行うため、警察から「死体検案書」を発行してもらいます)。死亡診断書の発行には手数料が数千円かかります。また、ご遺体をきれいにするための死後処置料等もかかります。そして、最寄りの役場に死亡届を提出に行きます。死亡届は「死亡を知った日」から7日以内に提出する必要があります。また、この時に「死体火葬許可交付申請書」を記入して、「火葬許可証」を発行してもらいます。この許可をもらわないと火葬ができません。なお、この手続きは葬儀屋に依頼することも可能です。

②     年金受給停止の手続き

被相続人の死亡後10日以内に、年金受給停止の手続きと未払い分の請求を行います。社会保険事務所か、役場の国民年金課が窓口となります。現在のところ、死亡届を役場に提出しただけでは年金の受給停止手続きは行われていないようです。なお、条件を満たせば遺族年金が支給されるケースがありますので、担当の窓口に確認をするとよいでしょう。

③     相続財産調査

相続財産の調査を行います。この調査が非常に手間と時間がかかります。故人の持ち物、財産を確認するわけですから、手掛かりがないと調査のしようがありません。

そこで、主な相続財産調査の手掛かりとなるものとしては、下記のようなものがあります。

  • 遺言書
  • 財産目録
  • 被相続人の通帳
  • 金融機関から届いている書面等
  • カード会社の請求書の引き落とし履歴
  • 権利証など現金以外の財産

この中でも、遺言書と財産目録はとても重要です。誰にどの財産を相続させる(もしくは遺贈させる)かを、明確に記しておいてあれば、相続のトラブルはある程度未然に防ぐことができます。ですから、できる限り弁護士と相談して生前の対策をされることをおすすめします。詳細は遺言書のページをご参照ください。

なお、この際に、被相続人が誰かの連帯保証人になっていないか、あるいは被相続人の連帯保証人に相続人がなっていないかも確認しておくとよいでしょう。なぜなら、被相続人が第三者の連帯保証人になっている場合、その第三者が破産するなどすると、請求が相続人にやってきます。ただし、この場合は後述の相続放棄ができる場合があります。一方、相続人が被相続人の連帯保証人になっており、請求が来た場合には相続放棄により保証債務を免れることはできません。その場合は債務を支払うか、相続人が債務整理を行うなどして対応する必要が出てくる場合がありますので注意が必要です。

④     銀行口座の凍結

そもそも相続財産は被相続人がなくなった後は、相続人共有の財産ですので、勝手に使ったり、処分したりしてはいけません。

被相続人が死亡した場合、その方の銀行口座は凍結されます。この銀行口座の凍結は死亡届を提出したからといって、自動的には行われません。銀行に出向いて手続きをする必要があります。財産を勝手に引き出して使ってしまったり、隠匿されたりすることを防ぐ目的があります。逆に凍結することで、相続人間のトラブルを防止しているのです。

もし、勝手に預金等を引き出して使ってしまったりすると、後述する相続放棄ができなくなるケースもありますし、相続人間で不審を招いたりトラブルになったりすることが多いため、注意が必要です。

ただし、葬儀費用等が必要な場合など、預金を引き出すことについて認められるケースがありますので、不明点は弁護士までご相談ください(葬儀屋の請求書等のほか、被相続人と相続人の戸籍謄本や除籍謄本、印鑑証明など、必要となるものが多数あります。一方、遺言書があり、遺言執行者も決まっていれば、スムーズに段取りが運ぶことが多いです。予め弁護士に遺言執行者を任せる生前対策をしておくことがとても大切なのです。)

⑤    相続人の調査

誰が法定相続人なのかを、きちんと戸籍謄本・除籍謄本を使って調べます。家族のことだからわかっていて当たり前とは限りません。家族のだれもが知らない隠し子がいたり、亡くなっていると教えられていた兄弟姉妹が後になって存命であることがわかったりすることもあります。ですから、ここでしっかり調べて確定させる必要があります。

法定相続人が誰なのか、把握しておくことはとても重要です。また、その相続人にどれだけの財産が法的に相続されるのか、つまり法定相続分についてもおさえておく必要があります。法定相続人の詳細については法定相続人・法定相続分のページをご参照ください。

なお、戸籍の収集は弁護士などでも「職務上請求」という特権により可能です。弁護士に依頼して代行してもらうとスムーズに行えて便利です。

⑥    遺言書の確認と検認

遺言のページにて詳細はご説明しますが、遺言書には様々な形式があります。「公正証書遺言」と呼ばれる公証役場で検認された正式な遺言書であれば問題ないのですが、「自筆証書遺言」と呼ばれる一般的な遺言書の場合、その遺言書を勝手に開封してはいけません。勝手に遺言書を開いてしまうと、その遺言書の改ざんや隠匿などを疑われることになり、トラブルを招きます。また、遺言書として認められなくなってしまうケースもあります。そこで、法定相続人全員が集まって裁判所で「検認」という確認作業を行います。「検認」とは、①相続人に対して遺言の存在と内容を知らせること、②遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防ぐ手続きです。

ここで、遺言書に疑念が発生することもあります。特に、被相続人が認知症等の病気を抱えていた場合などでは、「遺言能力」を問われます。本当にはっきりとした意志をもって遺言をしたのかどうか、本人の意思で書いたのか、誰かに騙されたり偽造されたりしていないかなど、疑いの目を向けられるケースがあります。そうしたトラブルを防ぐためには、予め正式な手続きを経て上述の公正証書遺言を用意したりするなどして、万全の対策を打っておく必要があります。逆に他の相続人に有利な遺言書が出てきておかしいと思った場合は、その遺言書について争うこともできます。いずれにせよ、弁護士の助けが必要となるでしょう。

最終的に正しい遺言書が確認されれば、それに沿って遺産分割が進められます。

⑦    相続放棄

相続放棄についての詳細は、相続放棄のページにて解説しますが、相続の開始を知った時から3カ月以内にこの相続放棄の手続き(家庭裁判所に相続放棄の申述の申立を行う)をし、認められれば、「もとから相続人ではなかった」という扱いになります。つまり、被相続人の借金などのマイナスの財産を相続する必要がなくなるのです。

もし、何もしなければ、「単純承認」として、プラスの財産もマイナスの財産(借金など)も相続することになるのですが、「相続放棄」を行うことで、親の借金を引き継ぐといったことを防ぐことができます。

ただし、相続放棄をすれば、プラスの財産も相続することはできませんので、現金や預金だけでなく、家などの不動産も相続できず、家を出なければならなくなるケースがありますので注意が必要です。

また、相続放棄はれっきとした法的手続きです。「相続を放棄する」と家族に一筆書いただけでは無効となります。きちんと家庭裁判所での手続きを経なければなりません。でないと、債権者から請求がきた場合、債務を支払わなければならなくなるケースがあります。

相続放棄の手続きは弁護士に依頼することが可能です。弁護士と相談して判断するとよいでしょう。

⑧     限定承認

限定承認と呼ばれるプラスの財産からマイナスの財産を差し引いた分だけ限定して相続するという方法もあります。こちらも相続放棄と同様、相続の開始を知った時から3カ月以内に手続きが必要です。

ただし、相続人全員が限定承認を行う必要があり、更に相続財産によってはみなし譲渡所得税が発生する可能性があります。被相続人の債務がいっそう膨らんでしまうことがあるため、あまり選択されない傾向があります(詳細は相続放棄のページにて解説しています)。

⑨     準確定申告

相続開始後4カ月以内に、被相続人の死亡した年の分の確定申告(準確定申告といいます)を相続人全員で行います。

⑩     遺産分割協議

遺産分割協議を相続人全員で行います。基本的には、相続人全員の総意、法定相続分を基準とし、遺産分割を行います。

この際、相続分を巡って、あるいは相続するもの(現金・預金であったり、不動産であったり)によっては相続人間でトラブルが発生しやすいです。ですから、弁護士に予め相談しておき、話がまとまりやすいように準備をすることが大切です。

場合によっては、意見が合わないまま、遺産分割調停や審判、裁判になるケースもあります。

⑪     名義変更

遺産分割協議や遺産分割調停、審判、あるいは裁判でまとまった結果をもとに、銀行口座や動産・不動産の名義変更、登記を行い、事実上相続が完了します。

⑫     相続税の納付

相続開始後10カ月以内に、相続人は相続税を納付します。この10カ月というのは長いようで実は非常にタイトなスケジュールとなります。相続税は納付期限内であれば、様々な控除項目があります。しかし、期限を過ぎてしまうと延滞税等がかかったり、控除を受けられなくなったりして納付額が高額になります。

遺産分割協議が順調に進めば良いのですが、トラブルが起きて相続税の納付が間に合わなくなるケースも多いです。するとさらに相続人同士でもめることになります。ですから、早い段階で弁護士に相談し、相続の流れを把握したうえで一つひとつの手続きを進めていくことが求められます。

当事務所でも相続の流れをご説明しながら遺産分割のお手伝いをいたします。まずはお早めにご相談ください。